🕐 1分でわかるサマリー

結論3行:

  1. フロン類の算定漏えい量事業者全体で年1,000t-CO2以上になると、国(事業所管大臣)への報告義務が生じ、社名つきで公表される(フロン排出抑制法19条)
  2. ほとんどの中小企業は該当しない。ただし「該当するかどうか自体、算定しないと分からない」ので、算定の仕組みは全管理者の必修
  3. 算定式はシンプル:(整備時の充塡量 − 整備時の回収量)× GWP ÷ 1,000。第7回まで保管してきた充塡・回収証明書を年1回合算するだけ

該当判定フロー(これ1枚で説明できます):

flowchart TD
    Start[年度末:充塡証明書と<br>回収証明書を全部集める] --> Calc[機器・冷媒ごとに<br>(充塡量−回収量)×GWP÷1,000<br>を計算して合算]
    Calc --> Q1[事業者全体で<br>年1,000t-CO2以上?]
    Q1 -->|いいえ<br>(大多数の企業)| Keep[報告不要<br>計算結果と証明書を保管<br>→ 来年度また同じ作業]
    Q1 -->|はい| Report[特定漏えい者として<br>翌年度7月末までに<br>事業所管大臣へ報告]
    Report --> Pub[国が集計して<br>社名つきで公表]
    Report --> Q2[1事業所だけで<br>1,000t-CO2以上の<br>事業所はあるか?]
    Q2 -->|はい| Site[「特定事業所」として<br>内訳も報告]

    classDef must fill:#0e7a5f,stroke:#0a5c48,color:#ffffff,font-weight:bold
    classDef ok fill:#f7f9fa,stroke:#7b8794,color:#52606d
    classDef warn fill:#fef3e2,stroke:#b45309,color:#7c3e02
    class Report,Site must
    class Keep ok
    class Pub warn

📖 実務解説

この制度で何が起きる? — 報告して、公表される

フロン排出抑制法には「フロン類算定漏えい量報告・公表制度」があります。管理する業務用冷凍空調機器(第一種特定製品)からのフロン漏えい量を毎年度算定し、事業者(会社)単位の合計が1,000t-CO2以上になった管理者(=特定漏えい者)は、国に報告する義務があります(法19条)。

報告された漏えい量は環境大臣・経済産業大臣が集計し、事業者名とともに公表されます。温対法の温室効果ガス排出量報告と同じ発想の「見える化」制度です。

💡 上司への説明フレーズ例:「うちが該当するかは規模次第ですが、該当すれば社名つきで国に公表されます。該当判定のためにも、年1回の漏えい量計算はやらせてください」

算定式はどうなっている? — 証明書の数字を並べるだけ

算定漏えい量は、機器の**整備時(修理・メンテナンス時)**に充塡回収業者から受け取る充塡証明書回収証明書の数字から計算します。

算定漏えい量(t-CO2)= Σ{(整備時充塡量 kg − 整備時回収量 kg)× GWP}÷ 1,000

  • 冷媒の種類(冷媒番号)ごとに計算してから合算する
  • GWP(地球温暖化係数)は第2回で扱った告示の値(令和5年経済産業省・環境省告示第3号。現行AR5値、令和6年度報告以降適用)を使う(例:R32=677、R134a=1,300、R22=1,760、R410A=1,920、R404A=3,940)
  • ÷1,000 は kg-CO2 → t-CO2 の単位換算
  • 廃棄時の充塡・回収は算定に含めない(整備時のみ。廃棄時回収は第9回の行程管理票の世界)

計算例(2機器・2冷媒の場合):

機器冷媒整備時充塡量整備時回収量漏えい量GWPCO2換算
冷凍機AR404A15kg0kg15kg3,94059.1 t-CO2
空調BR410A30kg10kg20kg1,92038.4 t-CO2
合計97.5 t-CO2

→ 1,000t-CO2未満なので報告不要。ただしこの計算をして初めて「不要」と言えるのがポイントです。

1,000t-CO2ってどのくらい? — 中小はまず届かない

  • R410A換算で約521kgの漏えいに相当(1,000,000 kg-CO2 ÷ GWP 1,920)
  • 目安として、ビル用パッケージエアコンなら1,500台以上を保有する規模、冷凍冷蔵ショーケースを大量に持つ**スーパーマーケットなら数店舗〜**で届きうるとされます(あくまで目安。機器の構成・冷媒種・漏えい状況により大きく変動するため、必ず自社の証明書ベースで算定してください)
  • 該当してきたのは大手小売チェーン、食品スーパー、大型冷凍冷蔵倉庫、化学プラントなどが中心です

工場1〜2拠点+事務所という規模なら、通常は数十〜数百t-CO2に収まります。恐れる制度ではなく、「うちは該当しない」と数字で言えるようにする制度と捉えてください。

フランチャイズ本部は要注意 — 加盟店も合算

一定の要件を満たすフランチャイズチェーン(連鎖化事業者)は、加盟店の機器も含めてチェーン全体で合算して判定・報告します(法19条2項に直接規定。約款要件の細目は算定漏えい量報告命令に委任 — 約款で機器管理等について本部の指導が定められている場合など)。コンビニ・外食チェーンの本部担当者はここが最大の注意点です。逆に加盟店側は、本部が合算報告する場合でも自店の充塡・回収証明書を本部に集約する実務が発生します。

該当したら何をする? — 報告の実務

項目内容
報告期限毎年度4月1日〜7月31日に、前年度分を報告
報告先事業所管大臣(その事業を所管する省庁。小売なら経産大臣など)
様式様式第1(必須:冷媒種類別・都道府県別の算定漏えい量など)+様式第2(任意:削減取組など)
電子報告EEGS(省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム)で提出可。温対法報告と同時提出できる
特定事業所1事業所だけで1,000t-CO2以上の事業所がある場合は、その内訳も併せて報告

未報告・虚偽報告には10万円以下の過料(法109条1号)(行政上の制裁金)が定められています。金額は小さいですが、実害は「公表制度のある法律で虚偽をやった会社」という評価のほうです。

該当しない会社がやるべきこと — 年1回の簡易運用

  1. 整備のたびに充塡証明書・回収証明書を受け取り、機器台帳と紐づけて保管する(第7回のルール通り。情報処理センター利用時は電子記録で代替)
  2. 年度が終わったら、証明書の数字を算定シートに転記して合算する(後述のDL資料で自動計算)
  3. 結果を機器台帳とセットで保管。「当社の算定漏えい量は◯◯t-CO2で報告対象外」と1行残す

これだけで、監査・本社照会・親会社のCSRデータ要求のどれにも即答できます。漏えい量の年次推移は、点検で見つけた不具合の成果指標にもなるので、担当者の仕事の見える化にも使えます。

⚠️ 注意

  • 報告単位は「事業所」ではなく**「事業者(法人)」全体**。拠点ごとに計算して満足せず、必ず全社合算すること
  • 本制度は国への報告であり自治体条例とは別枠ですが、自治体独自のフロン・地球温暖化対策条例で別途報告を求める例があります(自治体により異なる。東京都など事業所所在地の条例を確認)

📥 持ち帰り資料(ダウンロード)

① スライド版「漏えい量の算定と報告」(社内説明用・全6枚構成)

  1. 表紙:漏えい量は年1回計算する — 該当判定は計算しないとできない
  2. 該当判定フロー(本記事の図)
  3. 算定式と計算例(証明書→シート転記のイメージ)
  4. 1,000t-CO2の規模感(R410A約521kg/該当業種の例。台数等はあくまで目安と注記)
  5. 該当した場合の報告実務(期限7月末・EEGS・様式)
  6. うちの運用:年1回の算定シート更新フロー(担当・時期を記入)

② チェックリスト「漏えい量算定シート」(Excel構成案)

内容
機器No.機器台帳(第4回)と共通の管理番号
冷媒種類冷媒番号をプルダウン選択(R32/R410A/R404A…)
GWP冷媒選択で自動参照(第2回のGWP表をマスタに)
整備時充塡量 kg充塡証明書から転記
整備時回収量 kg回収証明書から転記
漏えい量 kg充塡−回収(自動計算)
CO2換算 t-CO2漏えい量×GWP÷1,000(自動計算)
証明書保管場所ファイル名・保管棚など
合計行全社合計t-CO2を自動集計し、1,000以上で赤色表示

次回予告

第9回「機器を廃棄するとき — 行程管理票と産廃処理への接続」 — 廃棄時はフロン回収の証明(行程管理票)がないと産廃に出せません。フロン法と廃棄物処理法がつながる、担当者最大の山場です。


参考文献・根拠

検証ステータス: エビデンス検証済み(2026-08-19、一部号レベルは公開直前にe-Gov目視確認推奨)。GWPは現行AR5値(令和5年経済産業省・環境省告示第3号、令和6年度報告以降適用)に全置換済み。フランチャイズ合算は法19条2項に直接規定(約款要件の細目は算定漏えい量報告命令に委任)、過料は10万円以下(法109条1号)で確定。