🕐 1分でわかるサマリー

結論3行:

  1. 銘板の圧縮機(電動機)定格出力が7.5kW以上の機器は、簡易点検に加えて**「十分な知見を有する者」による定期点検が義務。エアコンは7.5kW以上50kW未満=3年に1回以上/50kW以上=1年に1回以上**、冷蔵・冷凍機器は7.5kW以上なら一律1年に1回以上
  2. 実施できるのは冷媒フロン類取扱技術者などの有資格者等に限られる。自社に居なければ外注が現実解(多くの会社がそうしています)
  3. 定期点検をやっていても、3ヶ月に1回の簡易点検は免除されない。両方を台帳で回すのが担当者の仕事

対象と頻度の判定チャート(これ1枚で説明できます):

flowchart TD
    Start[銘板の<br>圧縮機定格出力は?<br>(第2回の台帳を見る)] -->|7.5kW未満| Kani[定期点検の義務なし<br>→ 簡易点検のみ継続<br>(3ヶ月に1回以上)]
    Start -->|7.5kW以上| Type[機器のタイプは?]
    Type -->|業務用エアコン| Air50[50kW以上?]
    Air50 -->|いいえ<br>(7.5kW以上50kW未満)| San[定期点検<br>3年に1回以上<br>+簡易点検は別途継続]
    Air50 -->|はい| Ichi[定期点検<br>1年に1回以上<br>+簡易点検は別途継続]
    Type -->|冷蔵・冷凍機器| Ichi

    classDef must fill:#0e7a5f,stroke:#0a5c48,color:#ffffff,font-weight:bold
    classDef light fill:#fef3e2,stroke:#b45309,color:#7c3e02
    classDef neutral fill:#f7f9fa,stroke:#7b8794,color:#52606d
    class San,Ichi must
    class Kani light
    class Start,Type,Air50 neutral

📖 実務解説

どの機器を、どの頻度で? — まずこの表だけ覚える

根拠は「第一種特定製品の管理者の判断の基準」(経済産業省・環境省告示。法16条1項に基づく — フロン排出抑制法)です。

機器区分圧縮機の定格出力定期点検の頻度
業務用エアコン7.5kW以上50kW未満3年に1回以上
業務用エアコン50kW以上1年に1回以上
冷蔵機器・冷凍機器(冷凍冷蔵ショーケース、チラー等)7.5kW以上1年に1回以上

覚え方は2つだけ。「エアコンだけ50kWで二段階」「冷蔵・冷凍は7.5kW以上なら毎年」。7.5kW未満の機器には定期点検義務はありません(簡易点検のみ)。

「7.5kWって、うちのはどれ?」 — 銘板と台帳で判定する

判定に使うのは**銘板(機器ラベル)の「圧縮機に用いられる電動機の定格出力(kW)」**です。第2回で作った機器台帳に「定格出力」列を入れていれば、台帳をフィルタするだけで対象機器リストが完成します。まだの人はこの機会に第2回へ戻って台帳を作ってください。

⚠️ 「10馬力だから対象」ではありません。 業務用エアコンの「○馬力」は冷房能力ベースの通称で、法の判定に使う圧縮機の定格出力(kW)とは別の数字です。馬力からの換算は機種によりバラつくため目安にしかならず、銘板のkW表記を読むのが唯一確実な方法です。銘板が読めない場合は型式(型番)からメーカーに照会を。1台に圧縮機が複数ある場合は合計値で判定します。

誰がやる? — 「十分な知見を有する者」の中身

定期点検は、フロン類の性状・取扱いと機器の構造・運転方法について**「十分な知見を有する者」が自ら行うか、検査に立ち会う**必要があります。環境省の資料では、具体的に次のA〜Cが該当するとされています。

区分内容
A冷媒フロン類取扱技術者(第一種:日本冷凍空調設備工業連合会、第二種:日本冷媒・環境保全機構が認定。フロン排出抑制法の施行に合わせて設けられた資格)
B一定の資格+所定の講習受講(冷凍空調技士、高圧ガス製造保安責任者〔冷凍機械〕、冷凍空気調和機器施工技能士 など6資格が例示)
C十分な実務経験(冷凍空調機器の整備・点検に3年以上等)+所定の講習受講

つまり社内の誰でもできる簡易点検とは違い、定期点検は専門家の仕事です。自社の設備部門にBの資格保有者(高圧ガス保安責任者など)がいる会社もありますが、講習受講まで揃っているケースは多くありません。メンテナンス業者・設備業者への外注が現実解であり、後ろめたいことではありません。

点検では何をやる? — 見積を読むための最低知識

定期点検の中身は告示・環境省資料で決まっています。外注するにしても、発注側がこれを知らないと見積の妥当性を判断できません

  1. 異常音の検査(聴く)
  2. 外観の目視検査 — 損傷・摩耗・腐食・錆び・油漏れ・熱交換器への霜の付着
  3. 漏えい検査直接法(発泡液の塗布、冷媒漏えい検知器、蛍光剤・窒素ガス充塡による検知)、間接法(蒸発器の圧力や電動機の電圧・電流などを計測し、過去の計測値と照合して異常がないことを確認)、またはこれらの組み合わせ

外注はどう進める? — 見積で確認する5点

料金は機器の台数・出力・設置環境(高所か、密集しているか)で大きく変わるため、当サイトでは相場額を断定しません。必ず2〜3社の相見積を取ってください。比較のポイントは金額よりも中身です:

確認項目見るポイント
① 点検範囲定期点検の3項目(異常音・外観・漏えい検査)をすべて含むか。漏えい検査は直接法か間接法か
② 対象機器の特定見積が台帳の機器No単位で書かれているか(「一式」は後で揉めます)
③ 記録簿の提供点検結果を法定保存に耐える記録簿の形で納品してくれるか(第6回で扱う点検・整備記録簿にそのまま綴じられる形が理想)
④ 実施者の資格冷媒フロン類取扱技術者等、「十分な知見を有する者」の該当区分を明示できるか
⑤ 単価構造台数単価か出力別単価か、出張費・報告書作成費が別建てか。簡易点検や保守契約との抱き合わせで安くなるかも確認価値あり

💡 上司への説明フレーズ例:「7.5kW以上の◯台は、法律上、有資格者の点検が3年に1回(大型は毎年)必要で、社内では実施資格を満たせません。相見積を取ったので、点検範囲と記録簿納品まで含むこの内容で外注させてください」

定期点検があれば簡易点検は不要? — いいえ、両方です

よくある誤解ですが、定期点検を実施している機器でも、3ヶ月に1回以上の簡易点検は別途必要です(第4回参照)。逆に、業者の定期点検・保守点検が入っているからといって、その内容が法の簡易点検項目をカバーしている保証もありません。「定期点検(専門家・年1または3年に1)」と「簡易点検(自社・四半期)」は並走する別の義務、と社内に説明してください。

3年に1回は、必ず忘れる — 周期管理のしくみ化

年1回の点検は年間行事にできますが、3年周期は担当者の交代をまたぐため、記憶による管理は必ず破綻します。対策はひとつ、台帳に「前回実施日」と「次回期限」を持たせて、機器ごとに期限を機械的に追うことです。

  • 台帳の次回期限列を年間カレンダー(第10回)に転記し、期限の6ヶ月前にアラートを置く(見積〜日程調整に時間がかかるため)
  • 引き継ぎ時は台帳ごと渡す。**「点検周期の管理は人ではなくファイルに担わせる」**のがこの連載の一貫した方針です

やらないとどうなる? — 社内説得用

  • 定期点検の未実施に即座に罰則が科されるわけではありませんが、判断基準に照らして著しく不十分な管理者には、都道府県知事の**指導・助言(法17条)→勧告・命令(法18条)**が段階的に及び、**命令違反には50万円以下の罰金(法104条1号)**が定められています
  • 点検を怠った機器から漏えいが進めば、フロン類の**みだり放出(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 — 法86条・罰則規定)**や、算定漏えい量報告(1,000t-CO2超で国へ報告)に波及するリスクがあります
  • 東京都では2021年に改正フロン法違反の全国初検挙事例も出ており、「バレない義務」ではなくなっています

※旧規定の「懲役」は2025年6月の刑法改正により「拘禁刑」に改められています

⚠️ 自治体差分の注意

定期点検の対象・頻度・実施者要件は全国共通(国の法律・告示)です。ただし、立入検査の運用、報告様式、独自の記録簿ひな形や補助制度は自治体により異なります。事業所所在地の都道府県サイトで「フロン排出抑制法」を確認してください。


📥 持ち帰り資料(ダウンロード)

① スライド版「定期点検の義務と頼み方」(社内説明用・全6枚構成)

  1. 表紙:7.5kW以上は専門家点検 — 対象は台帳でもう判定できる
  2. 対象と頻度の判定チャート(本記事の図)
  3. 頻度の表+自社の対象機器リスト(台帳から転記する記入欄つき)
  4. 実施者の要件(A〜C区分)と「外注が現実解」の説明
  5. 外注見積チェック5点(点検範囲・機器特定・記録簿・資格・単価構造)
  6. 周期管理のしくみ(台帳→年間カレンダー、期限6ヶ月前アラート)

② チェックリスト「定期点検管理台帳」(Excel構成案)

内容
機器No・機器名・設置場所第2回の機器台帳から転記
機器区分エアコン/冷蔵・冷凍(プルダウン)
圧縮機定格出力(kW)銘板から。複数圧縮機は合計
点検周期3年/1年(機器区分×出力から自動判定)
前回実施日直近の定期点検日
次回期限前回実施日+周期で自動計算。期限6ヶ月前で行を黄色、超過で赤に強調表示
委託先・実施者資格業者名+「十分な知見を有する者」の該当区分
記録簿受領チェック点検報告書・記録簿の受領日(第6回の保存実務へ接続)

次回予告

第6回「点検・整備記録簿の作成と保存」 — 簡易点検・定期点検・修理・充塡の記録を、1冊の記録簿にどうまとめ、いつまで保存するか。監査と業者対応に効く「記録の型」を作ります。


参考文献・根拠

検証ステータス: エビデンス検証済み(2026-08-19、一部号レベルは公開直前にe-Gov目視確認推奨)