🕐 1分でわかるサマリー

結論3行:

  1. 銘板(機器のラベル)で見るのは 冷媒の種類・冷媒充塡量(kg)・圧縮機の定格出力(kW) の3つだけ。ほかの数字は今は読まなくていい
  2. kWは定期点検の要否(7.5kW以上で専門家による点検が必要 — 第5回)、冷媒の種類×充塡量はCO2換算(漏えい量の算定・国への報告の判定 — 第8回)にそれぞれ直結する
  3. この3つを機器台帳に落とし込めば、点検計画も漏えい報告も台帳から組める。棚卸しは30日プランの土台

銘板の3情報がどの義務に効くか(これ1枚で説明できます):

flowchart LR
    Meiban[銘板<br>(機器ラベル)] --> KW[圧縮機の<br>定格出力 kW]
    Meiban --> Type[冷媒の種類<br>(R-410A等)]
    Meiban --> Ryo[冷媒充塡量<br>(kg)]
    KW -->|7.5kW以上?| Teiki[定期点検の要否・頻度<br>(第5回)]
    Type --> Conv[CO2換算<br>kg × GWP ÷ 1,000]
    Ryo --> Conv
    Conv --> Roei[漏えい量の算定・<br>国への報告判定(第8回)]
    Type --> Jutensaki[充塡・回収の依頼時に<br>業者へ伝える情報]

    classDef input fill:#0e7a5f,stroke:#0a5c48,color:#ffffff,font-weight:bold
    classDef duty fill:#fef3e2,stroke:#b45309,color:#7c3e02
    class Meiban,KW,Type,Ryo input
    class Teiki,Roei,Jutensaki duty

📖 実務解説

銘板はどこにある?何を読む?

銘板は、機器の型式・仕様が印字された金属またはシールのラベルで、室外機の側面か正面パネル、冷凍・冷蔵機器なら本体側面にあることが多いです。第一種特定製品には、フロン類が充塡されている旨や冷媒の情報を表示することが製造業者等に義務付けられており(法87条・フロン排出抑制法)、比較的新しい機器なら必要な情報は銘板とその周辺の表示ラベルにまとまっています。

読み取るのは次の3つです。

銘板の項目表記例何の義務に効くか
冷媒の種類R-410A、R-32、R-404A、R-22 などCO2換算(GWPが冷媒ごとに違う)。充塡・回収の依頼時にも必須
冷媒充塡量「冷媒量 5.2kg」などCO2換算のベース。回収依頼時の見積もりにも使う
圧縮機の定格出力「電動機定格出力 7.5kW」など定期点検の要否・頻度の分岐(下記)

⚠️ 「5馬力」は定格出力ではありません。 業務用エアコンの「○馬力」は能力の通称で、法の判定に使う「圧縮機に用いられる電動機の定格出力(kW)」とは別物です。必ず銘板のkW表記を読んでください。2以上の電動機により圧縮機を駆動する機器は、電動機の定格出力の合計で判定します(環境省・経済産業省「第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き 第3版」)。

kWで何が決まる? — 7.5kWが定期点検の分岐点

すべての第一種特定製品は3ヶ月に1回以上の簡易点検(資格不要 — 第4回)が必要ですが、圧縮機の定格出力7.5kW以上の機器は、それに加えて専門家による定期点検が義務になります(管理者の判断基準:平成26年経済産業省・環境省告示第13号)。

機器区分定格出力定期点検の頻度
業務用エアコン7.5kW以上 50kW未満3年に1回以上
業務用エアコン50kW以上1年に1回以上
冷蔵・冷凍機器7.5kW以上1年に1回以上
いずれも7.5kW未満定期点検義務なし(簡易点検のみ)

つまり棚卸しの段階でkWを台帳に入れておけば、どの機器に専門家点検の予算と委託先が必要かがこの時点で確定します。詳細は第5回で扱います。

冷媒の種類×量で何が決まる? — CO2換算の基礎式

フロン類の漏えい量は、冷媒ごとのGWP(地球温暖化係数:CO2を1とした温室効果の強さ)を使ってCO2の重さに換算します。

CO2換算の基礎式: 冷媒の量(kg) × GWP ÷ 1,000 = CO2換算トン(t-CO2)

例:R-410Aを10kg漏えいした場合 → 10 × 1,920 ÷ 1,000 = 19.2 t-CO2

事業者全体(法人単位)で年間の算定漏えい量が1,000 t-CO2以上になると、国への報告義務が発生します(法19条)。算定の実務は第8回で扱いますが、台帳に冷媒の種類と量が入っていないとそもそも計算が始められません。

主要冷媒のGWP(2024年4月1日以降に行う算定・報告〈=2023年度の漏えい実績分から〉に用いる値:令和5年経済産業省・環境省告示第3号・AR5):

冷媒GWP主な用途
R-221,760旧型エアコン・冷凍機(HCFC。生産全廃済みの旧世代冷媒)
R-410A1,920業務用エアコンの主流(2000年代〜)
R-32677近年のエアコン(低GWP冷媒への転換先)
R-404A3,940冷凍・冷蔵機器(ショーケース、冷凍冷蔵庫)
R-134a1,300チラー、カーエアコン等
R-407C1,620業務用エアコン(R-22からの代替期)

出典:令和5年経済産業省・環境省告示第3号(フロン類GWP告示)/環境省「フロン類算定漏えい量の報告に用いるフロン類の種類及びGWPについて」(令和5年7月)

⚠️ 古い資料のGWP値に注意。 2023年4月の告示改正で、算定に用いるGWPはIPCC第4次評価報告書(AR4)ベースから第5次(AR5)ベースに変更されました(2024年4月1日以降に行う算定・報告=2023年度の漏えい実績分から適用)。Webには旧値(例:R-410A=2,090)のままの解説が多数残っています。上の表の値で統一してください。

機器台帳はどう作る?

棚卸しの受け皿となる台帳の必須列は次の8つです。1行=1台(室外機単位)で作ります。

設置場所/機器種別/型式/冷媒の種類・充塡量/定格出力(kW)/設置年/点検区分/委託先

  • 点検区分は、kWから自動判定させます(7.5kW未満=簡易のみ、7.5kW以上=簡易+定期)
  • 設置年は、更新計画とR-22機器の洗い出し(部品・冷媒の入手が年々困難)に効きます
  • リース機器・テナント入居時の注意: フロン法の点検義務を負う「管理者」は原則として機器の所有者ですが、リース契約やビルの賃貸借契約の内容によって誰が管理者になるかが変わります。「リースだから」「借りているビルの設備だから」は義務を免れる理由になりません。 まずは台帳に「所有形態」列を足して全台リストアップし、管理者が誰かの整理は第3回で詳しく扱います

棚卸しは実際どう進める?

  1. フロアと屋上・バックヤードを歩く — 事務所・売場・厨房・サーバー室・倉庫・屋上の室外機置き場。プレハブ冷蔵庫や製氷機、自動販売機型のショーケースも忘れずに
  2. 銘板をスマホで撮影する — 1台につき「銘板のアップ」と「設置場所がわかる引き」の2枚。型式・製造番号が読める解像度で
  3. 写真を見ながら台帳に転記する — 現場でメモを取るより速く、証拠も残ります

銘板が読めない古い機器はどうする?

  • 室外機の型式(型番)だけでも控えて、メーカーの技術資料・お客様相談窓口で仕様を照会する(型式がわかれば冷媒種類・充塡量・定格出力はほぼ特定できます)
  • 過去の設置工事の完成図書・見積書・保守契約書に仕様が載っていることが多い
  • それでも不明なら、点検を依頼する業者に現地調査時の特定を依頼する。台帳には「仕様未確認」フラグを付けて空欄のまま放置しない

⚠️ 自治体差分の注意

フロン排出抑制法は国の法律で、点検義務・7.5kW判定・CO2換算のルールは全国共通です。ただし、自治体独自の指導要綱・条例(機器廃棄時の届出や上乗せの報告制度など)を設けている場合があるため、事業所所在地の都道府県・政令市のフロン対策ページを一度確認してください。

💡 上司への説明フレーズ例:「まず全台の棚卸しをさせてください。銘板の3項目を台帳にするだけで、どの機器にいくら点検費用がかかるかと、国への報告リスクの有無がその場で見えます」


📥 持ち帰り資料(ダウンロード)

① スライド版「対象機器の棚卸し」(社内説明用・全6枚構成)

  1. 表紙:フロン対応は機器の棚卸しから始まる
  2. 銘板の3情報→義務のマッピング図(本記事の図)
  3. 7.5kW判定と定期点検頻度の表
  4. CO2換算の基礎式と主要冷媒GWP表
  5. 機器台帳のサンプル(記入例つき)
  6. 棚卸しの3ステップと社内依頼事項(立入日程・鍵の手配)

② 機器台帳(Excel構成案)

内容
管理番号社内で採番(点検シールと合わせる)
設置場所建物・階・部屋(室外機の位置も)
機器種別エアコン/冷蔵・冷凍機器 からプルダウン
メーカー・型式銘板の型番を転記
冷媒の種類R-410A等をプルダウン(GWPを自動参照)
冷媒充塡量(kg)銘板の値
定格出力(kW)圧縮機の電動機定格出力。複数なら合計
設置年不明なら推定+フラグ
所有形態自社所有/リース/ビル付帯
点検区分kWから自動判定(簡易のみ/簡易+定期)
委託先点検・整備の依頼先業者
銘板写真リンク撮影した写真ファイルへのリンク
要対応フラグ仕様未確認・R-22機器・委託先未定を強調表示

③ 銘板読み方カード(現場携帯用・A6サイズ想定)

  • 表面:銘板のどこを見るか(冷媒種類・充塡量・kWの位置を実物写真で図解)
  • 裏面:撮影ルール(アップ+引きの2枚)と「読めないときの3手順」

次回予告

第3回「管理者の義務全体像 — 「持っているだけ」で義務は始まっている」 — 台帳ができたら、次は「誰が」義務を負うのか。リース・テナントで迷いがちな「管理者」の決まり方と、義務の全体マップを整理します。


参考文献・根拠

  • フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)19条(フロン類算定漏えい量の報告)、87条(表示)(e-Gov法令検索)
  • 第一種特定製品の管理者の判断の基準(平成26年経済産業省・環境省告示第13号)— 簡易点検・定期点検の頻度、7.5kW区分
  • 環境省「フロン類算定漏えい量の報告に用いるフロン類の種類及び地球温暖化係数(GWP)について」(令和6年4月版) https://www.env.go.jp/earth/furon/files/gwp_notice.pdf — GWP値の一次ソース(令和5年経済産業省・環境省告示第3号・AR5、2024年4月1日以降の算定・報告分)
  • 環境省「フロン排出抑制法ポータルサイト 漏えい量の算定・報告」 https://www.env.go.jp/earth/furon/operator/isshu_santei.html
  • 環境省「第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き 第3版」(令和3年4月) https://www.env.go.jp/earth/furon/files/r03_tebiki_kanri_rev3.pdf
  • 定期点検頻度(傍証): ダイキン工業「フロン排出抑制法における定期点検・簡易点検とは」 https://www.daikincc.com/fcs/topics/42/

検証ステータス: エビデンス検証済み(2026-08-19、環境省一次資料・運用の手引き第3版照合済み)。複数電動機の合計判定の【要エビデンス確認】マーカーは解消済み。